名古屋高等裁判所 昭和27年(う)1474号 判決
原判決を査閲し「原判決がその判示恐喝の事実の証拠として挙示している所論村上稲治に対する検察官作成の供述調書を閲すると右村上稲治の昭和二十七年十月二十三日附供述調書の末尾には名古屋地方検察庁同庁検事なる記載の次に検察事務官大沢正之の署名押印があつて検事の署名押印がないことが明白であり、又第一回公判調書を見ると、検察官は同期日において村上稲治の供述調書(検)を証拠として申請し、被告人は之を証拠とすることに同意し原審は之を採用し適法に証拠調を為した上、右調書を検察官作成に係る供述調書が検察事務官作成のものであつて同調書末尾の同庁検事なる記載が無用のものであるのか或は検事が検察事務官立会の上作成したものであるかを知るに由がないが、いづれにせよ右調書については前述の通り原審において被告人が刑事訴訟法第三百二十六条による同意を為している以上同法第三百二十一条第一項所定の要件を具備しないでも証拠能力を有するものと解し得べきのみならず原判決が右恐喝の事実の証拠として挙示している右村上稲治の供述調書以外の証拠を綜合して優に同判示恐喝の事実を認定するに足るから原判決には所論の如き判決に影響を及ぼすべき採証の法則に関する違法はないのでこの論旨は採用しない。